2007年02月13日火曜日
---奇妙なお話し7--- [ショートショート]
『かげ踏み』
仕事の息抜きに外に出てみた。
私の仕事は物書きなもので一日中部屋に居がちである。
夏も真っ盛りでこんな暑さを持て余す日は海にでも行きたいが、何せ物書きの悲しいところで締め切りが間近に迫っているのである。
外へ出たはいいが余計に仕事の内容が気になり始め、気分転換もあったものではない。
つまらん事をめぐらせているうちに近くの公園まで来ていた。
夏休みの公園はいつもより静かなことを初めて知った。
ただ数人の子供達がキャッキャ言いながら走り回っているだけである。
おてんとさんは容赦なく光の恵みを注ぐが、それを遊びに使っているらしい。
影踏みか。
自分も幼い頃姉たちと遊んだ記憶がある。
懐かしくなって、子供達に仲間に入ってもいいか聞いてみた。
鬼になるという条件付きですんなりと仲間に加わった私は、無邪気にはしゃぎ回る子供達を鬼のまねをして追いかけた。
彼らは皆一様に心底楽しそうな笑顔を絶やさず走り回っている。
いつしか私も子供に返っていた。
影を踏まれると誰かに助けられるまで、しゃがんだままそこで待っているのだ。
私は一人踏み、二人踏んで残り一人を追いかけていた。
男の子でなかなかすばしっこい。
やっと追いつき影を踏んだ。
「鬼交代」
彼は踏まれたまま立っている。
相変わらず笑顔だ。
私は、
「ほら君の影踏んだよ。」
と、足元を見ると踏んでいるはずの影がない。
周りを見ると子供達が居なくなっていた。
もちろん目の前にいた男の子もである。
その時どこからか昔懐かしい童謡が聞こえてきた。
今まで自分と遊んでいたのは何だったのだろう。
私は狐に摘まれた思いでいつまでも自分の影を見つめていた。
---おわり--- 1995年頃創作

