2008年08月19日火曜日
"その考え"こそ究極の宣伝広告??最終回 [ショートショート]
『ついに東京中へ広げてしまった"その考え"』 最終回
盆明けの都内はまだ動きが鈍いようで、新宿駅構内も観光帰りの人が目立つ。
8月18日 月曜日 いよいよ本番の時がきたのだ。
おいらは前回と同じように、駅に隣接した量販店へ向かう。
パソコン関連の売り場へ直行。
今日は客の足もまばらだ...うまくいくかなあ...。
まだ午前11時だからだろう。
そのうち客も増えてくるさ。
前回のデモンストレーションがあったから、手はずに問題なし。
おいらは例の如く、ノートパソコンのコーナーに入った。
そして画面に向かったおいらは、携帯電話を出し話し始めた。
「おはよう、坂本です。そちらは準備いかがですか」
「おはようございます。こちら、パソコンの前で待機しています。」
「了解です、時間になったら決行です。マニュアルどおりお願いしますよ」
「任せてください!準備は万端ですから」
「では、がんばりましょう!」
この会話を3人の相手と交わした後、携帯電話の時間を確認した。
あと3分で決行の時だ。
前回の経験があると言っても、やっぱり緊張するもんだね。
緊張と、何とも言えないワクワク感がたまんないんだ!
今回は新宿の他に池袋、秋葉原、渋谷をターゲットに決行するということで、アルバイトを雇ったのだ。
まもなく時間が来た!
おいらは手当たり次第に、ブラウザを立ち上げてファナップのサイトを表示する。
そのURLのショートカットをデスクトップへコピー。
ブラウザのお気に入りへ登録。
ブラウザの初期画面として設定。
店員の目など一切気にしない。
この一連の作業を、今回雇ったアルバイトに指示してあり、各ターゲットで一斉にこの作業が始まっているはずだ。
アルバイトに雇ったのは学生で、皆パソコンおたくっぽい人間ばかり。
ま、やることやってくれれば誰でもいいのだ。
作業を始めて1時間半ほど経ち、この店舗のパソコンは殆ど完了。
客の数も徐々に増えてきたようだ。
さて、ファナップのサイトがどれだけの人間の目に触れるのか。
コーナーから離れ階段の近くへ行くと、おいらはまた携帯電話を出し、池袋の相手にコールした。
「そちらはどうですか?」
少しして電話に出た相手は、
「ああ...あの、今店の人に説明しているんですよ...。」
「えっ?説明って何の?」
「...ファナップのサイトを見ていたことです。」
「バレたのか...でも別に問題ないでしょ」
「ところが作業が殆ど終わりに近づいた頃、店員さんたちが気づいたらしくて...僕、どうしたらいいですか...?」
電話の相手は、半泣き状態のようだ。
店員は店内のパソコンをチェックしたところ、全てのパソコンに同様の仕業が発覚したということだ。
それから渋谷、秋葉原でもほぼ同じ事態になっていたのだ。
"うわ~、やっば~"
彼らアルバイターは、店員から注意を受けただけでそれ以上のお咎めは無かったのだろう。でもおいらに対しての裁きは...?
当然身の危険を感じた彼らは、おいらからの指示と言うことは暴露しているはずだ。
でもこれって本当に法的には問題ないのか???
もし、訴えられたらどうしよう...(ーー;)
全国ニュースに取り上げられたりしたら...(゚o゚)
おいらは思わず、血の気が引いた。
小心者のおいらの頭の中では、次から次へと最悪な事態が湧きあがっていた。
あれからすでに3時間ほどが経過していた。
でもなぜここ新宿だけが見つからなかったのだろう...
と、考えていたおいらの横に、いつの間にか二人の男が近づいていた。
はじかれたように見ると、店員のようだ。
"うわ~、やっぱり見つかったのか..."
「坂本さんですね、ちょっとこちらへ来ていただけますか。」
階段近くのレジから裏の部屋へ、店員の後から着いていった。
"もうだめだ..."
比較的広めの部屋へ連れて行かれた。
そして店員の一人が、
「まあ、そこにお掛けください」
おいらと二人の店員は向かい合ってソファに座った。
おいらは居心地悪くって、どこに目線をもって行けばいいのやら。(゚∀。)
その時前の二人は、いきなり頭を下げたのだ。
「このたびは、当店の売り上げ促進に一役買っていただき、誠にありがとうございました。」
「・・・・・?????」
「おかげで、盆の時期にもかかわらず、客の入りが例年の倍以上を実現できたのです」
おいらは、店員の話が飲み込めなかった。
当然咎められると思っていたのだからね。
店員の話はこうだった・・・・。
前回のデモンストレーションの時から、おいらの仕業は発覚していたらしい。
(^^;;) エヘヘ・・
でも、その時は見てみぬふりで放免だったのだ。
その後、おいらのブログ(この一連の記事)を、偶然にも店員の一人が見ていたというのだ。
まさに「あの時のオヤジだ」...と感づいたらしい。
本番の日程が公開されていたので、「もしや、今日もう一度オヤジが姿を現すのでは!」ということで、店員全員がその現場を捉えようと待ち構えていたらしい。
そしておいらの作業が始まったわけだ。
その間、いつもより早い時間から客足が増えだしたらしいのだ。
おいらは自分の作業に没頭していたので、そんなこと気づきもしない。
そんな時、客の一人から、
「ファナップの坂本って人、今日現われたんですか?」
と、店員にそっと聞いてきたというのだ。
店員は作業に追われるおいらを尻目に、
「はあ?誰ですかそれ...」
と嘯いた。
それから何人かの客が、同じことを聞いてきたらしいのだ。
いやに来店者が多い。
殆どの客が、パソコン関連のコーナーへ来て、画面を確かめ始める。
「おおっ、これじゃん!ファナップのホームページだ。あの人やっぱり来たんだ!」
そして、客同士がお互いに"坂本"ではないかと、警戒し合っている。
「ファナップの坂本さ~ん、ここに来ているんでしょ!顔見せてよお。」
と、大きな声で叫びだす客もいたという。
「そんなこんなで、結局お客さんの来店数は過去最高で、売り上げも驚くほどの伸びを示したのですよ。6割近くのお客さんが、坂本さん遭いたさに来店したようです。系列の支店も同じ状況に驚いていました。今もまだうなぎ登りですよ!」
と、店員は嬉しそうに話すのだ。
「それで、坂本さんにお礼と言っては何ですが、何か欲しい物があればお持ち帰りいただきたいと思いまして。」
「はあ...」
災転じて福となす...ではないが、なんかおいらにとってもありがたいことじゃないかい!
"なんか欲しい物、欲しい物...."と考えている矢先、
「お父さ~ん、晩ご飯何がい~い~?」
という大きな声に、ふっと我に返った。
そうなんだ、今までの5話は、いつものおいらの空想癖がもたらした想像上の話だったのさ。
仕事の最中、"なかなか仕事が入らないなあ..."と考えているうちに、こんな大げさな空想の世界に入り込んでいたんだわさ (..*) ポッ
もちろん、量販店に行ってもあんなことはしないよ。
そんなにうまくいかないからね "r(^^;) ポリポリ
まっとうに頑張れば、必ず活路は見出せるさ!
とにかく努力しようぜ!
久しぶりのショートショート おわり

